悪性インフレを引き起こしかねないエネルギー価格の高騰 
2021.12.20
高騰したエネルギーの小売価格 

 今年は、石油製品、電気料金、ガス料金などエネルギーの国内価格が高騰した年でした。

 資源エネルギー庁が公表している給油所小売価格調査によると、21年11月8日の全国平均価格(消費税込み)はレギュラーガソリンが1リットル当たり168・9円、消費税が2019年10月に8%から10%に引き上げられた影響もありますが、14年8月以来7年4カ月ぶりの高値を記録し、軽油は1リットル当たり148・8円、灯油の店頭価格は18リットル当たり1949円と、いずれも2008年10月以来13年ぶりの高値となりました。その後4週連続で値下がりしましたが、依然として年初から30円前後高い価格で販売されています。

 石油製品の価格は、市場要因によって左右される面がありますので、以前は原油や石油製品の輸入単価が上昇しても小売価格に反映されなかったケースもありましたが、元売の再編が進み、マージンが崩れにくくなったため、原油や石油製品の輸入価格の上昇がほぼそのまま卸売および小売価格に反映されるようになっています。

 電気料金と都市ガス料金は昨年後半から上昇傾向で推移しています。今年9月から来年1月にかけて5カ月連続で全国の料金が引き上げられることが決まっており、月300kWh使用する標準的な世帯で年初来の電気料金の引き上げ幅が1千円を超える地域も出ています。

 電気と都市ガスの料金には原燃料の輸入価格と為替の変動を一定期間後の料金に自動的に反映する燃料費(ガスは原料費)調整制度が導入されています。現在は、3カ月分の平均燃料価格を2カ月後の月次料金に自動的に反映する仕組み(例えば1~3月の平均燃料価格が5月の料金に反映)となっていますので、翌月の電気と都市ガスの料金がどうなるかは、5カ月前と2カ月前の燃料輸入価格の差によって決まります。

 11月の燃料輸入価格が8月より高くなるのはほぼ確実ですので、電気料金は来年2月まで、都市ガス料金は来年4月~5月頃まで上昇傾向で推移すると予想されます。


複数の原因が絡んで急騰したエネルギー資源価格

 エネルギーによって、また、どの時点を起点にとるかによって、上昇理由は異なりますが、昨年半ば以降にエネルギーの国内価格が上昇した主な理由は、原油、石炭、LNG、LPGなどエネルギー資源の国際価格が高騰した上に為替が円安になったからです。

 エネルギー資源の輸入CIF価格の昨年の安値と今年10月の価格を比較すると、原油が1kl当たり1万6千6百円(20年6月)から5万5千3百円へ3・3倍、LNGが1㌧当たり3万2百円(20年9月)から6万8千6百円へ2・3倍、LPGが1㌧当たり3万6千円(20年5月)から8万7千8百円へ2・4倍、一般炭が1㌧当たり7千5百円(20年11月)から1万8千1百円へ2・4倍となり、それぞれ大きく上昇しています。

 エネルギー資源の価格が昨年から今年にかけて高騰した主な理由は、①新型コロナ影響の緩和によって世界的に景気が回復しエネルギー需要が増加してきたこと、②電力需要の回復、天候影響などにより火力発電用燃料需要が急増したこと、③エネルギー資源開発の投資が数年前から抑制されていたため、需要の回復に供給が追い付かなくなっていること、④北米のシェールオイルの生産量が投資の抑制や開発地域の制約などによって回復していないこと、⑤生産・供給障害が各所で起きたこと、⑥世界的に景気対策として金融緩和政策が講じられているため稼動流動性(金余り)が生じていることなどと考えられます。

 エネルギーの消費量は、人口、社会・生活水準、エネルギー利用機器の普及・利用状況などを反映します。先進国の需要は、2007年がピークで、その後は省エネ等によってほぼ横ばいで推移していますが、新興国・発展途上国の需要が、人口の増加、社会・生活水準の向上、エネルギー利用機器の普及などによって高い伸びを示しているからです。新興国・発展途上国の需要構成比は2020年度実績で60%を上回っています。2020年は新型コロナ影響で世界全体の景気が悪化し人流が抑制された影響も加わってエネルギー需要が減少しましたが、今年の春ごろから昨年の実績を上回るようになっており、2022年にはコロナ影響前の水準まで回復し、その後、2030年前後まで増加傾向で推移すると予想されます。

 一方、供給は、エネルギー資源価格の低迷や、脱炭素化への取り組みが急速に強化されたことなどで、資源開発投資が抑制されていたこともあり、需要の増加分を十分にカバーできていません。エネルギー資源価格の上昇によって開発投資が回復する可能性はありますが、世界的な脱炭素化の潮流が開発投資を抑制する方向に働き続けると予想されますので、供給力不足からエネルギー資源の価格が高騰しやすくなっていると考えられます。


悪性インフレを引き起こしかねないエネルギー資源価格の急騰

 輸入総額に占めるエネルギー資源の構成比は約20%に及びますので、エネルギー資源価格の急騰が国内経済に与える影響は小さくありません。

 エネルギーは価格が上昇しても消費を抑制することが難しい基礎資材です。製品やサービス価格の上昇でエネルギーコストの上昇を吸収できているケースも一部に見られますが、エネルギーコストの変動を価格に自動的に反映する仕組みが整えられている産業は少なく、エネルギー価格の上昇によって多くの事業者の収支や家計が圧迫されています。エネルギー資源価格の高騰が悪


北海道のガソリン価格予想
4月29日(月)から5月5日(日)まで
価格下降
仕切り価格値下げのため

04月30日付掲載予定

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