供給安定性に優れる石油とLPガス
2022.7.20
エネルギーの安定供給を図るため

 エネルギーはほとんどすべての経済活動や国民の暮らしにとって必要不可欠な基礎資材です。このため、エネルギー政策の基本的視点は、安全性の確保を前提とした上で、エネルギーの安定供給を第一とし、経済効率性の向上、環境への適合をバランスよく達成することとされています。

 石油とLPガスは供給安定性に優れたエネルギーです。石油とLPガスは需要家が利用機器に付帯した容器に貯蔵して利用していますので、大規模な自然災害の発生などによって国内の供給設備や流通経路が途絶するような事態に陥っても、すぐに利用できなくなることはありませんし、原料や製品を低コストで大量に貯蔵したり輸送したりすることができますので、特定地域で起きたトラブルによって供給が完全に途絶することがないからです。さらに今年4月末時点で石油は国内消費量の223日分、LPガスは同じく104日分備蓄されています。石油とLPガスがエネルギー供給の「最後の砦」と称されているのはこのためです。

 導管で供給される都市ガスは、化石燃料の中では二酸化炭素の排出量が少ないこともあり、導入および利用の拡大が進められてきました。しかし、都市ガスの主原料の天然ガスは約97%がLNGとして輸入調達されていますが、LNGは低コストで大量に貯蔵することが難しいため、季節的に需要が増加する夏季および冬季には国内消費量の2週間程度の在庫しか確保されていません。地震や津波などの大規模自然災害によって導管やLNGの受入・貯蔵設備などが損傷すると、復旧に長期間を要しますので、必ずしも供給安定性に優れたエネルギーではありません。

 石油とLPガスは、ゼロエミッションを実現するために、カーボンフリーの合成燃料やカーボンオフセットした原油・ガスに置き換えられる水準まで使用量を削減する必要がありますが、エネルギーの供給安定性を確保し続けるためには、拙速にエネルギーの需給構造を変化させることは避けるべきと思われます。


電力は供給安定性の確保が難しい

 電力は、常に変動している需要に供給を合わせる「同時同量」を確保し続けなくてはいけませんので、供給安定性を確保するのは石油やガスに比べてさらに難しくなります。

 今年6月下旬に東京電力管内を中心に電力需給がひっ迫し、6月27日~30日に「電力需給ひっ迫注意報」が発令されました。異例の暑さによる電力需要の大幅な増大、夏季の高需要期に向けて、複数の火力発電所で計画的な補修点検が行われていたため、6月下旬の供給能力が7月中旬の計画に対して約715万キロワット少なかったなどが、需給がひっ迫した主な理由でした。このため自家発電の焚き増し、補修点検中の火力発電所の再稼働、他電力管内からの電力融通拡大、大口需要家への節電要請、電力需給ひっ迫注意報の発令などの需給緩和対策が取られ、様々な媒体を通じて喚起された節電も奏功し、需要家への悪影響が大きい強制的な電力使用の抑制や計画停電の実施は避けられました。

 ただし、夏には、気温が1℃上昇すると電力需要は2~3%増加しますし、保守が適切に行われていても、発電所や送配変電設備が突然故障することがあり、太陽光発電も曇天の日には出力が大幅に低下しますので、今年の夏は、全国的に節電が求められるリスクがあると考えられます。

 今年の冬の電力需給見通しは夏季よりさらに厳しく、火力発電所の出力増、原子力発電所の再稼働などを見込んでも、北海道と沖縄を除く各地域で供給力がピーク電力需要を下回る見通しが示されています。冬の方が夏より需給がひっ迫(現時点の予想では不足)すると予想されている理由は、空調(夏季は冷房、冬季は暖房)に使用されるエネルギーのピークが、夏は昼間で晴天なら太陽光発電の発電量が増加する時間帯とおおむね一致しますが、冬は太陽光発電が発電していない夕方から朝にかけて増加するからです。供給力がピーク需要を下回ると、節電が求められるのはもちろんのこと、強制的な電力使用の抑制、計画停電の実施などに迫られる可能性があります。供給力を十分に積み増すことは難しいので、これらが避けられるかどうかは、ピーク電力需要をどこまで抑制できるかによります。


構造的な電力需給緩和策は限られる

 電力の供給力不足への対策として様々なアイデアが出されています。休廃止予定の火力発電所の運用、火力発電の増設、原子力発電所の稼働正常化、太陽光発電の増設、風力発電の増、蓄電能力の増強、送電線の増強、水素利用の拡大、地熱発電の増設、水力発電の増設などです。これらの中で、今年の電力需給ひっ迫に有効と思われる対策は、火力発電設備の出力増(建設中の発電所の早期稼動、休廃止予定の発電所の運用)と原子力発電所の稼働正常化に限られます。他の方法は所要期間、増強可能量、コストなどに難があるからです。

 原子力は、①利活用すると温室効果ガスの排出量を確実に削減でき、火力発電用燃料の消費・輸入量も削減できる、②わが国の原子力関連設備は、すでにそれぞれの立地地点において想定されている最大規模の地震・津波に耐えられる安全対策を完了している、③稼働増に伴う追加コストが限定されるため経済性に優れているなどです。

 ロシアのウクライナへの軍事侵攻によって、LNGや石炭の調達が不透明になっていることを勘案すると、原子力の正常化は最優先で検討すべき国策の一つと思われます。


住宅・ビルの省エネは窓対策だけでも効果大

 断熱対策を強化することは、省エネ、ピーク需要の抑制などに有効な対策です。一般家庭のエネルギー消費量の4分の1程度(全国平均)を占める空調需要を抑制できるからです。

 既設住宅でも外断熱の施工をすれば省エネ住宅に生まれ変わりますが、窓を断熱性が高い複層ガラスの断熱サッシに交換したり、マンションでも可能な内窓を追加したりするだけで、断熱性は大きく高めることができます。

 断熱対策が取られていない住宅では熱の出入りの8割程度が窓からと分析されています。内窓を追加すると遮音性も高まりますので、快適な住環境をつくり出すこともできます。内窓の追加は住宅のリフォームとして今年の冬に間に合うお勧めできる省エネ対策の一つです。




北海道のガソリン価格予想
4月22日(月)から4月28日(日)まで
変わらず
仕切りにより、値上げも

04月25日付ヘッドライン

■膨らむ期待GW商戦 一気呵成の「挽回」期す
■「失敗は有効解導く手段」 札危協保安研修会で三田薫氏講演
■石販業者への配慮明記 官公需「基本方針」が閣議決定
■保有率77.6%、小幅減少 自工会が乗用車市場動向調査
■好調油販さらなる拡販に照準 フルの強み生かし道エネ環状通SS