エネルギー価格は世界経済の写し絵
2023.2.20
経済情勢や地政学リスクなどを反映し乱高下するエネルギー資源価格

 世界経済は近年大きく変化し、その影響を受けて、エネルギー資源の価格が乱高下しています。


 2020年は、新型コロナウイルス(COVID19)感染症の大流行が経済や社会にきわめて大きな影響を及ぼした年でした。ウイルスの感染が中国から世界に広がり、各国が感染防止策を講じた同年3月以降、世界恐慌以来の急激な景気の後退が世界各国で起きるとともに、社会システム、人々の暮らしが大きく変化し、それがエネルギーの需給に大きな影響を及ぼしたからです。

 2021年はエネルギー資源価格が上昇傾向で推移し、2022年には、ロシアがウクライナに軍事侵攻した影響などから急騰。為替が円安になったことから、円建て輸入価格はさらに押し上げられました。

 2020年から2022年にかけての輸入CIF価格の月次平均価格の最安値と最高値をみると、原油が1キロリットル当たり1万6千6百円(20年6月)から9万9千6百円(22年7月)へ6・0倍、LNGが1トン当たり3万2百円(20年9月)から16万4千9百円(22年9月)へ5・4倍、LPGが1トン当たり3万6千円(20年4月)から11万4千4百円(22年5月)へ3・2倍、一般炭が1トン当たり7千5百円(20年11月)から5万6千8百円(22年10月)へ7・6倍になるなど、いずれも大幅に上昇するとともに、エネルギー資源間で上昇率に差がみられるようになりました。すべてのエネルギー資源の価格がわずか3年でこれだけ大きく変動したのは初めてのことです。

すべてのエネルギー価格がわずか3年間で今回のように急騰した例はない


 2020年の原油相場は、年初に1バレル約70ドルで始まり、新型コロナの影響が広がった3月から4月にかけて急落し、ドバイ原油の現物スポット取引価格は4月下旬に1999年3月以来の安値となる13ドルまで下落しました。その後、6月中旬にかけて、OPECプラスによる協調減産の拡大、新型コロナ影響の緩和による燃料油需要の減少幅縮小などを背景に原油価格は40ドル台まで反発し、6月下旬から年末にかけての期間は比較的安定的に推移しました。LNG、LPG、石炭の価格も、2020年は軟調に推移し、いずれもこの年に輸入CIF価格は近年の最安値を記録しました。

 2021年は資源価格が上昇傾向に転じました。新型コロナ影響の緩和により景気がやや回復してエネルギー需要が増加したこと、2010年代後半の資源価格の低迷やESG投資選別の影響などでエネルギー資源の開発投資が抑制されていたため需要の回復に供給が追い付かなくなったこと、景気対策として金融緩和政策が講じられている国や地域が多く過剰流動性(金余り)が生じていたことなどが原油、LNG、LPG、石炭の価格が上昇した主な理由だったと考えられます。

 2022年は、前年のエネルギー資源価格の上昇理由に加えて、ウクライナに軍事侵攻したロシアに経済・金融制裁が下された影響などによって、ロシアのエネルギー資源の生産・輸出量が減少し需給構造が変化したこと、地政学リスクが高まったことなどから、原油、天然ガス、石炭の価格が急騰しました。さらに内外の経済・金融情勢を反映して為替レートがドル高・円安になったこともあり、エネルギー資源の円建て輸入価格がさらに押し上げられました。

 ちなみに、エネルギー資源によって価格上昇率に差がみられる理由の一つは、ロシアの影響による差と考えられます。ロシア産のエネルギー資源が2021年の国際間輸出入に占める比率は、原油12%、天然ガス26%、LNG7%、石炭18%と差がみられます。原油は、ロシアに対する経済制裁に加わっていない国々が輸入を増やしていることもあり、世界全体の需給に大きな影響は生じていません。一方、ロシアのシェアが高い天然ガスの需給は引き締まっています。LNGは、ロシアからパイプラインによって天然ガスを大量に輸入していた欧州各国が、不足分の一部をLNGにシフトしたことで需給がひっ迫し、スポット価格が一時急騰しました。石炭は、ロシア依存度が高い上に欧州において天然ガスの不足を石炭で補う動きが起きていること、ESG投資選別の影響が最も強く供給量が抑制されていることなども影響して需給がひっ迫しています。対して、LPGは、北米や豪州で生産量が増加したことなどから需給が緩んでいるため、価格上昇率がもっとも低くなっています。


エネルギー資源価格は2023年も下がりにくい

 2023年は、新型コロナ影響がほぼ解消することによる景気の回復、新興国・発展途上国の人口増や経済成長などを反映し、エネルギー資源の世界全体の需要は増加すると見込まれます。

 中国が脱コロナ政策に転換した影響は少なくないと予想されます。

 世界各国で行われている金融引き締めなどインフレ抑制策の影響などが見込まれますのでエネルギー需要が急増することはないでしょうが、各資源の供給量に大幅な増加は見込めませんし、ロシア情勢が短期間で収束するとは思えませんので、原油、天然ガス、石炭の価格が、ロシアがウクライナに軍事侵攻する前の水準まで戻る可能性は低いと思われます。

 内外の経済・金融情勢の差を勘案すると、為替が円高になる可能性も低いと思われますので、エネルギー資源の円建て輸入価格は今年も下がりにくい状況が続くと予想されます。


北海道のガソリン価格予想
4月29日(月)から5月5日(日)まで
価格下降
仕切り価格値下げのため

04月30日付掲載予定

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