LNGの安定調達リスク高まる
2022.10.20
天然ガスの供給不安と価格高騰リスク高まる

 我が国は天然ガス(メタン、エタン)の約98%をLNG輸入に頼っていますが、天然ガスはこれまで、エネルギー資源の中では「供給安定性」と「経済合理性」に優れているとされてきました。

 経済合理性が優れている理由は、LNGの長期契約の価格算定方式の多くが原油価格高騰局面で原油より割安になっていることや、世界的にLNGの取引量が拡大し、取引形態が多様化する中で、平時には長期契約より割安になるケースが多いスポット取引を組み合わせることなどにより、調達が柔軟化してきたためと説明されていました。


 ところが、LNGの需給がひっ迫してスポット取引価格が急騰したり、LNGタンカーの傭船料が高騰したりしてきたため、LNGの輸入価格が原油に対して割安でなくなっています。

 中期的にみても、欧州の調達量の増加などからLNGの需給がひっ迫化傾向で推移すると予想されるため、スポット取引の価格が高止まりすると見込まれること、長期契約の更新時に従来に比べて割高な算定式に見直されるケースが増えていることなどから、LNGが経済合理性に優れているとは言えなくなってきました。

 天然ガスが供給安定性に優れるとされていた理由は、埋蔵資源量が比較的豊富で、世界各地で産出されるため、石油のように国際情勢の影響を受けるリスクが低いこと、我が国のLNG輸入元にはオーストラリア、東南アジア、アメリカなど、我が国と友好関係にあり、地政学リスクが小さい国が多いことなどと説明されてきました。

 しかし、ロシアがウクライナに軍事侵攻した影響などによってLNGの供給安定性が根底から揺るがされてきました。21年にわが国の輸入量全体の9%弱を占めていたロシアからの輸入が、ロシア政府の意向によって大幅に削減されたり輸入できなくなってしまったりするリスクが生じているからです。

 実際に、ロシアを批判している欧州各国では、ロシアから天然ガスの輸入を削減されてエネルギーの安定供給を確保することがままならない状態に陥っています。また、欧州各国がLNGの受入設備を増強して輸入を増やしているため、LNGの需給がひっ迫化しており、LNGタンカーの傭船料が高騰し短期傭船できる船腹量も減少しています。

 加えて10月6日、日本のLNG調達元の一つである「マレーシアLNG」が、ガスパイプラインの一部が地滑りで破損したため、災害などの不可抗力によって販売先への供給義務が免除されるフォースマジュールを宣言しました。この影響についてはまだ定かではありませんが、当面、我が国が調達できるLNGの量が減少するのはほぼ確実でしょう。


大量貯蔵が難しいLNG

 石油とLPガスの調達には大きな問題は生じていません。その理由の一つは、十分な備蓄量が確保されているからです。さらに、LPガスは国際需給の緩和、輸入元の変化などから、むしろ供給安定性が高まっています。

 それに対してLNGは、備蓄が実施されておらず、国内の在庫量は、冬季には国内需要の約2週間分しか確保されていません。

 LNGに備蓄のニーズがなかったわけではありませんが、供給安定性が高いと認識されていたこと、また、LNGは高圧極低温にしなければ貯蔵したり輸送したりすることができないことから、液化・輸送・受入・貯蔵設備の建設及び維持コストが嵩むため、大量に貯蔵することが難しいことなどが、備蓄が実施されなかった理由と考えられます。


法改正による効果は期待薄

 LNGの供給安定性を確保するため、JOGMEC法(石油天然ガス・金属鉱物資源機構法)が2020年6月に続いて近くさらに改正される見通しです。

 2020年6月の改正は、自然災害の頻発、国際エネルギー情勢の緊迫化等、電気供給を巡る環境変化を踏まえて、持続可能な電気の供給体制を確保するために電気事業法の一部が改正された際に実施されたもので、JOGMEC(独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構)のエネルギー関係の業務に、LNG貯蔵事業への出資・債務保証業務、一時的な権利取得業務、緊急時における発電用燃料の調達業務などが追加されました。

 さらに、経済産業省は、都市ガス需給がひっ迫した場合、使用量の多い大企業に使用制限令を出せるようにガス事業法を改正する案をまとめ、併せて、民間会社による都市ガス用のLNG調達が難しくなった場合、国がJOGMECに代替調達を要請できるよう、JOGMEC法を改正する方針を示しており、年内にも関連法が改正される見通しです。

 この結果、都市ガスも電気と同じように強制力のある使用量の削減ができるようになりますので、節ガスを実施しやすくなりますが、JOGMECは、LNGを自ら購入していませんし、在庫も持っていませんので電力会社や都市ガス会社が必要な量のLNGを調達することが難しくなった場合、供給不足を解消する効果を期待することはできません。

 節ガスは、家庭用などの民生用途では、お風呂やシャワーの湯の設定温度を下げたり、湯の使用量を減らしたり、また、調理の際にガスコンロ使用しなくてもよい調理方法を選ぶようにすることで、ガスの使用量を減らすことができますが、産業用途での節ガスは、稼働率を下げるしかありませんので、我が国の経済に確実に悪影響を及ぼします。

 電力も、ガス火力発電所を十分に利用できなくなってしまうと、供給力が不足したり、調整力が不足したりすることで、安定供給を確保しにくくなります。ただですら今年の冬季は、全国的に電力の供給力が不足すると予想されていますので、今年の夏季に実施された「節電の呼びかけ」だけでは対応できなくなり、「電力使用制限令による大口需要家への使用制限」、さらには「エリアと時間帯とあらかじめ指定して行われる計画停電」の実施に迫られるリスクが高まっているのです。

 エネルギーが経済活動や国民の暮らしにとって必需品であることを考慮すると、由々しき事態に陥っているのですが、国民のほとんどに危機意識が乏しいことが大いに懸念されます。





北海道のガソリン価格予想
4月29日(月)から5月5日(日)まで
価格下降
仕切り価格値下げのため

04月30日付掲載予定

■「採算販売」最優先に 北石連・商理事会が総会提出議案承認
■「まずは技術力磨け」 HNCが勝ち組SS応援セミナー
■基本方針への準拠求める 官公需で経産省が都道府県知事に要請
■LINEでショップカード 道エネチャレンジ西野3条SS
■油販増大へ集客策次々 東日本宇佐美セルフ山の手通宮ノ丘SS