石油各社は好業績を維持するものの電気事業は安定供給が不安視される状況に
2022.8.25
石油事業者は2022年度第1四半期も好決算に

 エネルギー関連業界では、21年度決算で業種・企業により明暗が分かれましたが、先ごろ公表された22年度の第1四半期でも前年度と同様の傾向が見られました。エネルギー資源価格の高騰と円安がその主な理由ですが、電気事業では規制制度改革や制度運用上の弊害も表れてきており、エネルギーの命題である安定供給に大きな支障が生じかねない状況になっています。

 石油元売各社は、前年度に続いて22年度第1四半期でも好決算を発表しました。石油元売各社の22年度第1四半期連結決算は、ENEOSホールディングスの営業利益が前年同期比101%増の3253億円、親会社の所有者に帰属する四半期利益が同127%増の2214億円、在庫影響除き営業利益が57%増の1172億円。出光興産の営業利益は同110%増の2336億円、親会社株主に帰属する四半期純利益は同103%増の1793億円、在庫影響除き営業利益は同77%増の744億円。コスモエネルギーホールディングスの営業利益は同157%増の1239億円、当期純利益は同178%増の776億円、在庫影響除き営業利益は同77%増の511億円でした。

 原油などエネルギー資源価格の上昇と円安によって在庫評価による利益の押し上げが生じたこと、同様の理由で資源開発事業の収益が拡大したこと、タイムラグによるかさ上げもあり石油製品の国内マージンが高水準で推移したこと、海外市況の高騰を背景に石油製品の輸出収益が拡大したことなどが主な好調理由でしたが、在庫評価影響やタイムラグ影響を除いても石油販売の国内事業は好調を維持していました。

 石油販売事業者やLPガス事業者も、小売マージンが高水準で推移していましたので、大半の事業者が本業で良好な収益を確保していたと推察されます。

 今年1月に支給が開始された燃料油価格激変緩和対策事業による補助金の影響は原油価格及び為替の変動によるコスト変変動分がほぼタイムラグなく卸売および小売市況に反映されていたこと、補助金の市況額がコスト増分の2分の1になる㍑35円を上回った時期が限られていたことなどから、卸売・小売ともにマージンへの影響は小さく、また、必需品である石油製品の需要は価格変動による影響をほとんど受けませんので、この四半期の石油関連事業者の業績に対する影響はほぼニュートラルだったと考えられます。

 元売各社が採算販売に努めていたこと、輸出が好調だったこともあって国内需給が引き締まっていたことなども高マージンが維持された理由だったと考えられます。

 なお、燃料油価格激変緩和対策事業は支給額の削減あるいは廃止時に燃料油の価格に大きな影響が及ぶようだと、消費増税時にみられたように補助金の減額によって価格が確実に上昇すると思われる直前に仮需が発生し、上昇後にその反動減が生じて、石油製品の受注・配送・販売に混乱が生じる可能性がありますので、価格が緩やかに変動するように配慮する必要があると思われます。


電気事業者の業績は、燃料高により前年度に続いて低迷、電気事業制度改革の問題も露呈

 電力各社の業績は前年度に続いて低迷しました。旧一般電気事業者(電力会社)は、前年度の連結決算の当期純利益が全社減益あるいは赤字となり、10社合計が970億円の赤字になりましたが、22年度第1四半期も、北海道、中部、四国を除く7社が赤字(前年同期の赤字は3社)になりました。原油、石炭、LNG価格の上昇と円安による燃料価格の上昇を電気料金に反映するための燃料油調整制度のタイムラグ差損が収支を圧迫した上に、東北、北陸、関西、中国、四国、沖縄では、燃料費調整制度の平均燃料価格が電気料金に転嫁できる上限を超過したことで回収不足による収支の悪化も生じました。

 新電力も、電力卸取引市場の価格高騰によって、業績が低迷する会社が少なくなく、電気事業から撤退する会社も増えています。

 原子力の再稼動が、稼働のために原子力規制委員会及び規制庁から求められている度重なる基準の変更や審査の遅れなどから、遅れていることが引き続き電力各社の収支を圧迫し、かつ電力供給力不足の原因の一つになっています。供給力不足から電力卸取引市場の価格が高騰する原因にもなっていますので、新電力の業績が悪化している背景事情にもなっていると考えられます。

 また、規制分野である送配電事業の収支が、先行投資の拡大や需要の減少等の影響によって事業費用と料金回収とのアンバランスが拡大したり、電力市場価格の高騰によって収支の圧迫が生じたりして赤字に陥る電力会社も増えています。

 今後生じる再エネの導入拡大、レジリエンス対策の強化、採算の悪化に伴う火力発電所の廃止、エネルギー資源情勢の変化などを勘案すると、電気事業の命題である供給安定性を向上させるためには、非対称規制や行為規制によって歪められ、電力取引の過度な市場化によって不安定化した電気事業制度を再度見直したり、運用を是正したりする必要があると思われます。







北海道のガソリン価格予想
4月15日(月)から4月21日(日)まで
価格上昇
値戻し後に値下げも

04月20日付ヘッドライン

■広がる困惑、失望感 対量販構図変わらず 札幌市場
■昨年度、減少に転じ17件 危険物取扱者の違反行為
■3月決算組「まずまず」 収益環境の良化が支える
■消費、供給ともに減少 2022年度エネルギー需給実績
■42%が「月に1回以上」 GfKJapanが洗車で調査