ロシアのウクライナ軍事侵攻とその影響について
2022.4.20
ロシアへの経済・金融制裁が広がる

 ロシアによるウクライナの蹂躙は過去にも繰り返し起きていました。

 その象徴的な出来事の一つが1932年から1933年に起きた「ホロモドール」で、その際にはロシア政府によって強制移住を強いられ、農地や家畜を奪われたウクライナ人に数百万人から千数百万人の犠牲者が出たとされています。


 1991年にソ連が崩壊して現在のウクライナが建国されましたが、2014年にはロシアがウクライナのクリミア半島に軍事侵攻したことがあり、これには国連が総会で非難決議を採択していました。

 今回の軍事侵攻は、昨年12月初旬に衛星映像によってウクライナ国境に向かうロシア軍が確認され、今年2月12日には米国政府がロシアのウクライナ侵攻がいつ始まってもおかしくないと警告を発していました。

 そして2月24日、ロシア軍がウクライナの複数の都市を攻撃して大々的な軍事侵攻が始まりました。

 国際社会の反応は早く、翌2月25日には、G7が「可能な限り、最も強い言葉で非難する」との声明を発し、国連安全保障理事会がロシアを非難する決議案を採決しました。ロシアが拒否権を行使したため議案は否決されましたが、15理事国のうちロシアと採決を棄権した中国、インド、UAEを除く11カ国が決議案に賛成しました。さらに3月2日には、国連総会が緊急特別会合で、ロシアによるウクライナ侵攻に「最も強い言葉で遺憾の意を表す」とする決議案を採択、賛成141カ国、反対5カ国(ロシア、ベラルーシ、北朝鮮、シリア、エリトリア)、棄権35カ国(中国、インドなど)で可決されました。

 そして、G7が中心となって、①ロシアの個人・団体への査証の発給停止、②ロシアの金融機関やプーチン大統領、その家族や側近、ロシア経済界の要人などを対象とする資産凍結、③輸出入取引の制限、④ロシア国内での企業活動の制限、⑤国際銀行間通信協会(SWIFT)からロシアの主要行を排除する金融制裁などが実施され、これらの制裁を受け、ロシア通貨のルーブルは暴落しています。


ロシア制裁は長期化しその悪影響は広がっていく

 ロシアおよびロシア系企業への制裁は、プーチン政権に対するものですから、軍事侵攻が終結したとしても、政権が刷新されない限り継続される可能性が高く、経済・金融制裁は長期化すると見込まれます。

 関係当事国であるロシアとウクライナの経済規模(世界銀行の統計によると2020年のGDPシェアはロシア1・9%、ウクライナ0・2%)はそれほど大きくありませんが、原油、天然ガス、石炭などのエネルギー資源、アルミニウム、ニッケル、チタン、パラジウムなどの金属資源、小麦などの農産物等の生産・輸出シェアは高く、ロシアとの輸出入取引が制限されると、世界経済への悪影響が広がっていくと考えられます。

 特に、エネルギー資源の需給や価格には大きな影響が及ぶと考えられます。 


エネルギー資源の供給不安・価格高騰が長引く可能性が高い

 ロシアのエネルギー資源の2020年生産量(シェア)は、BP統計によると原油が日量1067万バレル(12・1%)、天然ガスが6385億立方㍍(16・6%)、石炭が400百万㌧(5・2%)、輸出量(シェア)は原油が日量743万バレル(11・4%)、パイプラインによる天然ガスが1977億立方㍍(26・2%)、LNGが404億立方㍍(8・3%)、石炭が275百万㌧(17・8%)に及びます。エネルギー資源の価格がロシアのウクライナ軍事侵攻をきっかけに急騰したのはこの高いシェアが理由です。

 ちなみに、わが国の2021年の輸入量に占めるロシア産のシェアは、原油3・6%、LNG8・8%、一般炭1・2%、原料炭6・5%でした。

 すでに、米国はロシアからの原油及び天然ガスの輸入を停止すると発表し、欧州各国でも原油や石炭の輸入を段階的に停止する計画を発表しています。シェル、BPもロシア関連事業から撤退すると公表しています。

 わが国は、ロシア関連の原油及び天然ガス開発事業から撤退しない方針を示していますが、米国など西側諸国の今後の対応次第では、撤退を余儀なくされる可能性がなくもありません。

 また、ロシアの資源開発をけん引してきた西側のエンジニアリング会社が撤退すると、操業体制に支障が生じて、原油や天然ガスの生産量が大幅に減少する可能性があります。

 原油、LNG、石炭のいずれも、ある程度の期間をかければ、調達先をロシア以外の地域に振り替えることは可能ですが、短期間では難しく、特にLNGは、①長期契約が取引の主体であるため、短期契約・スポット取引で調達できる量が限られている、②一昨年から、需給のひっ迫を背景にスポット取引価格が高騰している、③スポット取引に用いられる短期傭船契約のLNGタンカーの多くがアジアから北大西洋に移動しているため輸送能力が制約されるリスクがある、④天然ガスのロシア依存度が高い欧州各国がLNGでの調達量を大幅に増やす方針を示しているなどの事情があり、季節的に需要が増加する夏場と冬場に調達量が不足したり、価格が高騰したりしかねません。

 対ロシア制裁が長期間に及び、その内容が強化される可能性があることを勘案すると、経済活動や国民の暮らしに必要不可欠なエネルギーの供給安定性を確保するための対策を早急に講じる必要があります。短期的には、原子力規制庁による審査体制を合理化して原子力発電所の稼働率を高めたり、ロシア依存度が相対的に低い石炭火力を有効に活用したりする対策が有効と思われ、中長期的には、省エネの推進、風力や太陽光などの再生可能エネルギーの導入及び利用の拡大、そのために必要な送電網の増強や蓄電・蓄エネ設備の増強などに取り組む必要があると思われます。その猶予期間は限られていると認識すべきでしょう。



北海道のガソリン価格予想
4月22日(月)から4月28日(日)まで
変わらず
仕切りにより、値上げも

04月25日付ヘッドライン

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