「燃料油価格激変緩和対策」発動も止まらない石油製品市況の上昇
2022.2.20
石油製品の小売市況は08年以来の高値水準まで上昇

石油製品の給油所の全国平均価格は、22年1月24日にレギュラーガソリンが㍑170・2円、灯油の店頭市況が㍑110・4円、軽油が㍑150・0円となり、ガソリンは08年9月以来、灯油と軽油は08年10月以来の高値を記録しました。後述する燃料油価格激変緩和対策が1月27日に発動しましたが、その後も全国平均市況は上昇傾向で推移しています。

 石油製品の国内市況が上昇している主な理由は、原油価格の上昇、為替の円安、卸売および小売マージンの拡大、消費税率の引き上げ(19年10月1日に8%から10%へ引き上げ)などです。いつを起点とするかによってそれぞれの影響額は異なりますが、20年後半以降の最大の上昇理由は原油価格の高騰です。20年6月に㍑16・6円だった原油輸入CIF価格は21年12月に㍑59・0円に上昇し、消費税を含めると約47円のコストアップ要因になっています。また、10年代半ばと比較すると、卸売および小売マージンの拡大も小売市況の上昇理由になっています。

 ちなみに足元の原油価格(1バレル80㌦)と為替レート(1ドル115円)を基準にすると原油価格が1バレル5㌦の上昇がそのまま反映されると石油製品市況は㍑3・6円(消費税を含めると4・0円)、為替が1㌦5円安になると㍑2・5円(消費税を含めると2・8円)それぞれ押し上げられます。

 なお、レギュラーガソリンの15年と21年の平均マージンを比較すると、卸売マージンは㍑2円程度、小売マージンは㍑5円程度、それぞれ拡大しています。


石油製品市況に影響を及ぼす諸要因

 石油製品の卸売価格に最も大きく影響している元売系列向け仕切価格は価格フォーミュラに基づいて決定されていますが、その構成要素は、石油製品のスポット市況、原油価格、為替、機能提供料などです。

 石油製品のスポット市況は、原油価格との連動性が強く、需給も反映しますが、国内では元売の施策の影響を強く受けます。元売の再編が進んだ10年代後半以降、ENEOSをはじめとする元売各社が、需給を引き締め、系列外ルートへの安値供給を抑制したことなどからスポット市況が底上げされ、これが卸売及び小売マージンの拡大につながっています。

 小売市況は、地域、SSごとで異なっていますが、各地域の市況を左右しているのは、安売量販志向の強い独立系の販売業者、元売の販売子会社、それぞれの地域で販売シェアが高い有力販売事業者などです。一部業者が安売しているだけなら影響は限定されますが、価格競争が始まると市況が崩れる傾向が見られます。10年代後半以降は、元売の販売子会社が適正マージンの確保を図っていること、系列外取引が縮小し、スポット市況が底上げされたことなどから、小売マージンも拡大しています。


燃料油価格激変緩和対策が発動

 原油価格高騰を受け、21年11月19日に石油製品市況の上昇抑制策「コロナ下における燃料油価格激変緩和対策事業」が閣議決定され、施行されました。 

 同事業の対象期間は21年12月から22年3月末までで、対象油種はガソリン、軽油、灯油、重油です。

 発動条件は、資源エネルギー庁がHPで公表している給油所市況調査におけるレギュラーガソリンの全国平均が㍑170円以上になることで、この水準を超えると、円建ての原油価格(日経ドバイ原油の円換算額)の変動幅に基づいて、㍑5円を上限に国から対策費が支給されます。支給開始後は、発動条件が㍑170円から1カ月に1円ずつ段階的に切り上げられ、対象期間中にガソリン価格が発動要件を下回ると支給が停止されます。

 本制度が石油製品価格の指標としている給油所小売価格調査において1月24日時点のレギュラーガソリンの全国平均価格が㍑170・2円となり、発動条件を満たしたことから対策費の支給が始まりました。

 初週(1月27日~2月2日)の支給単価は㍑3・4円、2週目(2月3日~9日)は㍑3・7円でしたが、原油価格が上昇したことで3週目には支給単価の上限となる㍑5円を超え、不足分は卸売価格の上昇につながると予想されます。

 資源エネルギー庁のホームページでは「本制度は卸売価格を抑制するしくみで小売価格を抑制するしくみではない」、「本制度はガソリンなどの小売価格の急騰を抑えるために行うもので、値下げを目的とするものではない」と明記されています。  元売は支給額に応じて系列仕切価格を抑制していますが、卸売コストが上昇する局面で発動されますので、卸売価格が低下するとは限りません。実際、発動した直後には、原油コストの上昇による影響額が上回ったため、元売の系列仕切価格、小売価格の全国平均ともに前週比で上昇しました。

 一般には、このしくみが良く理解されていないように思われます。元売各社の今年度の業績は、在庫評価によるかさ上げもあり、軒並み好決算を計上する見通しです。

 販売事業者も良好な小売マージンに支えられて大半が利益を確保できる見通しです。コスト上昇局面では、需要家に、小売市況の上昇理由を分かりやすく、かつ丁寧に説明することが重要です。説明が不十分だと事業者に対する不審が広がってしまいかねないからです。業界を挙げた早急な対応が必要と思われます。



北海道のガソリン価格予想
4月15日(月)から4月21日(日)まで
価格上昇
値戻し後に値下げも

04月15日付ヘッドライン

■浮沈をかけ「春商戦」 油外増販で油販穴埋め
■昨年も自主廃業375件 人材難主因 中央会調査
■過去10年で最少 27件 札幌での危険物施設等事故
■災害対応能力強化事業 石油協会が補助申請受付け
■成約率など前年上回る USSの2023年度中古車オークション