石油業界は合理化・効率化への取組を継続するとともに価格上昇局面では需要家に分かりやすく説明することが重要に
2022.9.20
エネルギーにより価格の動きが変化、原油はドル建て価格軟化と円安が相殺、LNGと石炭は高止まり  

 原油、LNG、石炭の価格の動きが異なってきました。原油は、ロシアがウクライナに軍事侵攻した今年2月24日に跳ね上がった価格が6月半ばから徐々に軟化してきましたが、LNG、石炭のスポット価格は2月下旬以降ずっと高値圏で推移しています。その主な原因はロシア産エネルギー資源の国際市場への影響の差によると考えられます。

 ロシア産エネルギー資源が国際間取引に占める比率は、BP統計によると、21年実績で原油が約13%、LNGが約9%、パイプラインによる天然ガスが約22%、石炭が約18%でした。西側諸国ではロシアとの取引を制限する動きが広がっていますが、原油は、ロシアの取引シェアがそれほど高くない上に、ロシアと友好関係にある国々がロシアからの調達量を増やしたりしているため、国際需給に大きな影響を及ぼしていません。

 対して、天然ガスは、ロシアから天然ガスをパイプラインで大量に調達していた欧州で、ロシアからの輸入を削減し(ロシアからの輸出が削減され)、LNGでの調達を増やそうとする動きが広がっており、これがLNGのスポット取引に大きな影響を及ぼしています。ロシアのシェアが高い石炭の需給もひっ迫状態が続いています。これらがLNGと石炭の価格が高止まりしている原因の一つと推察されます。

 わが国は、21年にロシアから原油を524万kl(構成比3・6%)、LNGを657万トン(同8・8%)、一般炭を1409万トン(同1・2%)輸入しています。政府はロシアからのエネルギー資源の輸入を続ける方針を示していますが、ロシア側の判断によると考えられます。原油と石炭は比較的短期間で他国に振り替えられると思われますが、LNGは国際需給、LNGタンカーの傭船可能量などからみて、短期間で他地域に振り替えるのは難しいと考えられます。

 一方、為替の円安が進んでいることで、円建てのエネルギー資源価格が押し上げられています。年初に1ドル110円台半ばだった円ドルレートが9月初旬時点で140円台半ばまで30円近く円安になりましたが、金融政策の違いから為替レートに大きな影響を及ぼす金利差がさらに拡大する見通しですので、当面、円安傾向に歯止めがかかるとは思えません。

 ちなみに円建て原油価格は、原油価格1バレル100ドル、為替レート1ドル140円で㍑88円ですが、この水準から、ドル建て価格が1バレル10ドル変動すると㍑約9円、為替が1ドル10円変動すると㍑約6円、円建て価格は変動します。ドル建て原油価格は3月中旬の高値から9月上旬までに約20ドル下落しましたが、為替が1ドル20円余り円安になったことで、円建ての原油価格はほとんど変わっていません。


燃料油市況は08年以来の高値水準に上昇し激変緩和対策で3月半ばから横ばいで推移


 原油価格の高騰と円安を背景に燃料油価格が上昇傾向で推移していたことを受け、21年11月に「コロナ下における燃料油価格激変緩和対策事業」が閣議決定され、施行されました。同事業の対象油種はガソリン、軽油、灯油、重油です。この対策の発動条件は、資源エネルギー庁の給油所市況調査におけるレギュラーガソリンの全国平均が㍑170円以上になることでしたが、発動条件が満たされたことから、1月27日の週から支給が開始されました。

 当初、対象期間は、21年12月~22年3月末でしたが、原油価格の高騰と為替の円安によって円建て原油価格が一段と上昇したことから、今年9月末まで期間が延長され、10月以降も支給水準を引き下げながら、当面、価格抑制策が継続される方針が示されています。


 対策費の支給上限は、当初㍑5円でしたが、円建て原油価格の急騰を受けて、3月10日の週から㍑25円、さらに4月25日の週から㍑35円までの全額と㍑35円を超過した分の半額が支給されるように拡充されました。支給額の上限が拡大されたことで円建て原油価格と支給額がほぼ相殺されるようになり、3月半ば以降、燃料油の価格はほぼ横ばいで推移しています。なお、燃料油の小売価格は原油価格が史上最高値の1バレル140ドル超まで上昇した08年以来の水準まで上昇しています。


石油業界は市況上昇局面で需要家に分かりやすく説明することが重要に


 燃料油の国内価格が上昇した主な理由は、原油価格の上昇、為替の円安、卸売および小売マージンの拡大、消費税率の引き上げ(19年10月1日に8%から10%へ引き上げ)などです。いつを起点とするかによってそれぞれの影響額は異なりますが、20年後半以降の最大の上昇理由は原油価格の高騰で、20年6月に㍑16・6円だった原油輸入CIF価格は22年7月に㍑99・7円に上昇し、消費税を含めると㍑約91円余りのコストアップ要因になっています。これを7月平均で㍑約38円の激変緩和対策による支給額が減殺しています。

 10年代半ばと比較すると、卸売および小売マージンの拡大も小売市況の上昇理由になっています。

 原油輸入CIF価格、資源エネルギー庁が公表している卸売価格と給油所小売価格調査の全国平均から算出したレギュラーガソリン、灯油、軽油の16年と21年の平均マージンを比較すると、レギュラーガソリンの卸売マージンは㍑3・7円、小売マージンは㍑6・0円、灯油の卸売マージンは㍑6・8円、小売マージンは㍑0・9円、軽油の卸売マージンは㍑6・7円、小売マージンは㍑2・2円、それぞれ拡大しています。

 元売各社や石油販売事業者が16年度以降に好業績を維持している主因はマージンが改善しているからで、その背景には、精製・元売の再編・集約・経営統合、石油精製から流通に至る各段階での事業所並びに設備の集約、過当販売競争の是正など、業界全体で身を削って合理化・効率化に取り組んだという事実があります。ちなみに、これらに行政はほとんど関与していません。

 石油販売事業者も、石油製品の業転市場に割安な価格で大量に製品が供給されなくなったこと、元売の販売子会社や有力販売店のほとんどが適正マージンの確保に努めていることなどから、良好な収益環境が維持され、大半が本業で好業績を確保しています。

 石油業界の合理化・効率化の取組がすべての需要家に正確に理解されているわけではありません。例えば、燃料油激変緩和対策事業が石油事業者の利益を押し上げていると誤解する向きもあります。

 10月以降、燃料油激変緩和対策事業の支給額が縮小される方針が示されていますので、円建て原油価格が低下しなければ、燃料油の価格が押し上げられることになります。製品価格が上昇する局面では、需要家に、小売市況の上昇理由をわかりやすく、かつ丁寧に説明することが重要と思われます。





北海道のガソリン価格予想
4月29日(月)から5月5日(日)まで
価格下降
仕切り価格値下げのため

04月30日付掲載予定

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