ENEOS水素事業推進部の中川幸次郎グループマネージャーが基調講演
次世代エネルギーである「水素」に関連する産業を、将来を担う大きな産業軸のひとつとすべく、その実現に向けた取り組みを進める室蘭市は24日、室蘭市市民会館に350人ほどを集めて「水素エネルギーフォーラム」を開催。パネルディスカッションなどを通し、港湾やものづくり産業の集積を活かした次世代エネルギー集積都市・室蘭の実現を手繰り寄せた。
フォーラムでは、室蘭市の白熊良平副市長があいさつしたのに続き、ENEOS水素事業推進部の中川幸次郎グループマネージャー(写真上)が基調講演。自社の「水素社会実現に向けた取り組み」を紹介した。
水素の特徴などから話を進めた中川グループマネージャーは、4大都市圏を中心に全国47カ所で水素ステーションを展開している、などとしながら、トヨタ自動車と連携し進めるWoven水素ステーションなど具体的な構想3例に言及。サプライチェーンの構築に向けては、メチルシクロヘキサン(MCH)方式で豪州など海外からのCO2フリー水素を自社製油所で受け入れ、コンビナートの大規模需要家に供給する取り組みを新たに進めていることなどにも触れた。
また、再エネ資源を活用した国産グリーン水素の製造・利用イメージを示しながら、併せて再エネ合成燃料(e─Fuel)の製造に取り組んでいることなども明らかにした。
このあと大成建設の本岡功成技師長が水素吸蔵合金を用い室蘭市で進めた環境省の「建物及び街区における水素利用普及を目指した低圧水素配送システム実証事業」を、室蘭市の佐々木殉一産業振興課長が洋上風力発電を含めたこれまでの取り組みを報告。
さらには「次世代エネルギー集積都市・室蘭の実現可能性について」をテーマに、中川、佐々木両氏のほか日本製鋼所M&Eの荒島裕信氏、北海道電力の富田隆之氏、室蘭ガスの前山芳輝氏、室蘭工大の亀川厚則氏をパネラー、デロイトトーマツコンサルティングの加藤健太郎氏をモデレーターとしたパネルディスカッション(写真下)も進めた。
中では「再エネを拡大していく中で、電力を大量に貯蔵することは難しく、そこで水素の出番となるが、つくる、運ぶ、貯める、使うという4つの機能の整合性が取れたところが適地になる」 「行政、産業、市民が水素をよく知っていることが重要だ」などとして、室蘭が有するポテンシャルの高さを是認する意見が出る一方、水電解装置で水素を製造するための余剰電力の不安定さや、その際のコスト高を指摘する意見も。また、他地域との連携が欠かせないなどとの意見も出た。