エネルギー事業に関する規制・制度改革について
2023.5.20
エネルギー産業の規制・制度改革にかかわってきて

 私は、1994年から2007年にかけて石油およびLPガス、2008年から2015年にかけて電力および都市ガスの規制・制度改革に公的審議会・研究会等の委員として、あるいは外部有識者として参画していました。


 エネルギー事業関連の主な規制・制度改革では、特定石油製品輸入暫定措置法(特石法)の廃止、石油備蓄法の改正、石油製品の品質規格の見直し、セルフ給油の解禁、事業所の再編・集約・設備廃棄などを促す諸制度の改革、電気料金・ガス料金制度の改訂、電力・都市ガス小売りの全面自由化、送配電部門の法的分離、ガス導管事業制度の創設、行政刷新会議における自然エネルギーや水素などの導入を推進するための制度仕分けなどにかかわってきました。

 私は産業や企業を調査・分析する際に、定性的だけでなく、データやファクツに基づいて定量的に産業・企業を評価し、企業の経営者、各事業部門の管理職、現場担当者、取引先、所轄省庁、業界団体などの関係者と幅広く意見を交換したり、事業所を視察したりすることで、事業全体、並びに事業者を深く理解するように努めています。

 このため、規制・制度改革を議論する際には、事業の状況や性質等を踏まえた上で、改革が公益に適うかどうか、事業全体の合理化・効率化を促すことができるかなどを判断基準にして意見を述べています。

 私の意見は、改革を進めたい側や新規参入事業者等の立場からすると保守的過ぎると映っていたかもしれませんし、事業者からすると自社の利益の増大につながらないと思われたかもしれません。

 ただし、規制・制度改革が行われた後の変化をみる限り、結果的に大きく間違った意見を述べたり懸念を示したりしたことはなかったと自負しています。


大きな問題を抱える電力業界の規制・制度改革

 一方、電力業界では近年、規制・制度改革を起因とする様々な問題が噴出しています。電気事業にかかわる規制・制度改革の方針が、2011年に起きた東日本大震災の前後で様変わりしたことがその一因と思われます。

 なお、1995年から2010年にかけて進められた電気事業の規制・制度改革は成功したと評価されていました。電力の供給安定性の向上、内外価格差の縮小、環境対応などが着実に進む中で、コスト削減・効率化などの取り組みによって、電気事業者の経営体質が改善したからです。

 私は、東日本大震災の前後で規制・制度改革の議論に参画していました。電力システム改革においては制度設計を進める上での条件や懸念を示していましたが、取りまとめに賛成しましたので、同改革による影響の責任は問われても仕方がないと自認しています。私が述べた主な意見、懸念は次のとおりです。

 ① 電気事業全体の健全性が損なわれないよう十分に配慮し事業全体の合理性を損ないかねない過度な非対称規制や行為規制は設定しないか、経過措置で設定された場合は役割を果たした後に速やかに撤廃すべき。

 ② 小売り全面自由化で新規事業者の参入が進んだとしても、事業全体で合理化・効率化が進まなければ電気料金の平均水準は下がらない。需要家を選べる強みがある新規事業者の優遇は競争を歪めて合理化を損ねるので望ましくない。

 ③ 卸電力市場の利用を行政が関与して過度に促すのは望ましくない。平時に卸電力価格が低下して固定費の回収が難しくなって十分な供給力を確保しづらくなり、需給ひっ迫局面では卸電力価格が高騰しやすくなるリスクがあるからだ。

 電力システム改革専門委員会で論点とされなかった原子力事業制度、料金制度、再エネの導入推進策などについては、別途意見を具申しました。例えば、

 ④ エネルギー政策を策定する際には、まず原子力事業を速やかに正常化することが肝要。そのために原子力規制委員会・同規制庁の運営を是正すべき。

 ⑤ 料金規制は、規制分野以外では撤廃し、規制料金の審査ではコストの裏付けのない水準の抑制は事業の健全性を損なうので望ましくない。

 ⑥ 再エネの導入は推進すべきだが、供給安定性の確保、需給調整や送電設備の増強等にかかわるコスト増などにも配慮すべき。

 などです。

 業界の事情を理解している有識者の多くが私と同様の指摘や懸念を示していました。

 電力業界で近年起きている問題の一部は、規制・制度改革等の弊害として予見されていたのです。今後、是正に向けた取り組みを行うことが必要と思われます。 



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4月22日(月)から4月28日(日)まで
変わらず
仕切りにより、値上げも

04月25日付掲載予定

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