燃料油価格抑制策には問題も
2023.9.25
ガソリンの小売価格が15年ぶりに史上最高値を更新

 資源エネルギー庁が毎週公表している給油所小売価格調査によると、2023年9月4日時点のガソリンの全国平均価格はレギュラーガソリンが㍑186・5円、ハイオクガソリンが㍑197・3円となり、いずれも史上最高値を更新しました。

 これまでの最高値は、原油価格が1バレル150ドルに迫った2008年8月のレギュラーガソリン㍑185・1円、ハイオクガソリン㍑196・0円でしたので、15年ぶりに最高値を更新したことになります。

 なお、前記価格は消費税込みの価格であり、08年8月時点の消費税率は5%でしたので、ガソリンの消費税抜き価格は最高値を超えていません。

 また、軽油の給油所小売価格㍑165・8円、灯油の店頭小売価格㍑124・9円も、08年8月の史上最高値(軽油㍑167・4円、灯油㍑132・1円)を下回っています。


燃料油価格の抑制に大きな効果を発揮した燃料油価格激変緩和対策

 21年11月に「コロナ下における燃料油価格激変緩和対策事業」が閣議決定され同年12月に施行されました。対象油種は、当初はガソリン、軽油、灯油、重油の4油種、22年4月28日以降は航空機燃料を加えた5油種で、予算規模は、22年1月から23年9月末までの概算で6兆2千億円に及んでいます。

 同対策は、資源エネルギー庁がウェブサイトで公表している給油所市況調査においてレギュラーガソリンの全国平均価格が㍑170円以上になった場合に発動され、価格が発動要件を下回ったら支給が停止されるしくみで、この条件を満たした22年1月27日に石油元売等の卸売業者に補助金の支給が開始されました。支給上限額は当初㍑5円でしたが、上限額が3月10日から㍑25円、4月25日から㍑35円+超過分の2分の1に拡大されました。

 石油元売等は、市場価格などに基づいた価格フォーミュラによって決定されている指標価格から補助金分を減額して卸売価格を決定するようになりましたが、22年3月から今年5月にかけて、原油コストの変動が補助金額の増減と相殺され、燃料油の卸売価格はほぼ横ばいで推移し、小売価格もほぼ同水準で推移していました。

 補助金支給額が㍑40円を超えていた22年6月から7月にはレギュラーガソリンの小売価格は㍑170円台で推移していましたので、同対策が講じられていなければ、その時期にレギュラーガソリンの小売価格は㍑210円を超えていた計算になります。

 元売や石油卸売事業者が補助金の一部を利益として取り込んでいると指摘する向きがありますが、原油コストにほぼ準じて変動する自家燃料や副原料のコスト、輸送費などの増加分を考慮すると、同対策が施行される前に比べて卸売・小売の両段階でマージンの全国平均は拡大していませんので、対策による価格抑制効果は適正に発揮されていると考えられます。 


やめにくくなった燃料油価格抑制策には問題も

 燃料油価格激変緩和対策は今年1月から5月にかけて支給上限額が毎月㍑2円ずつ縮小(上限超過分の2分の1は維持)されましたが、この間は、原油コストが支給上限の範囲に収まっていたことから、燃料油の価格はほぼ横ばいで推移していました。

 ところが、23年5月29日の週から補助金を算定する補助率が2週ごとに上限範囲内で10%ポイント(上限超過分で5%ポイント)ずつ削減されるようになってから、原油価格および石油製品のスポット市況が上昇したため、6月初旬から卸売価格が上昇し、6月から8月にかけて小売価格の全国平均は、ガソリンと軽油が㍑約17円、灯油が㍑約13円上昇。消費者物価の上昇要因の一つとして注目されるようになりました。

 そして、燃料油価格の抑制を求める世論が高まってきたことなどから、政府は、燃料油価格抑制策の継続を決定し、9月7日から補助金の支給水準が引き上げられました。

 補助率は、9月7日からは基準となるレギュラーガソリンの小売価格の全国平均が㍑168円から㍑17円を超える分については全額支援し、㍑17円以下の部分については9月7日から10月4日までは30%、10月5日から12月31日までは60%支援されることになり、補助金の額は9月7日に前週の㍑9・1円から㍑17・4円に増額され、卸売価格も低下しました。これにより9月第3週のレギュラーガソリン小売価格の全国平均は、とりあえず㍑184円80銭にまで低下しています。

 燃料油激変緩和対策には問題がないわけではありません。

 本来の目的は、名称のとおり新型コロナウイルスによるパンデミックと感染抑止策の影響などによって景気が低迷する局面で起きた急激な原油高と円安による影響を和らげる「激変緩和措置」だったはずですので、「出口戦略」を策定して公表していれば、昨年秋から年明けにかけて原油価格が値下がり傾向で推移した局面でやめられたと思われます。

 また、現状の燃料油価格抑制策は、燃料油の単価を下げるしくみですので、使用量が多い需要家ほど得られる補助金の額が大きくなり、自動車などの石油機器を利用していない国民や事業者は直接的なメリットを得られません。

 電気料金や都市ガス料金にも共通しますが、エネルギー価格の抑制策は省エネに逆行するしくみとも言えなくもありません。公平性を考えるなら、世帯あるいは個人に定額を補助する「直接還元型」のしくみの方が良かったように思われます。



北海道のガソリン価格予想
4月29日(月)から5月5日(日)まで
価格下降
仕切り価格値下げのため

04月30日付掲載予定

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