エネルギー基本計画の策定に必要不可欠な現行政策の厳正な評価
2023.10.20
次のエネルギー基本計画は来年か再来年に改定される見通し


 わが国では、2002年に「エネルギー政策基本法」が制定され、エネルギーの需給に関する施策の長期的、総合的かつ計画的な推進を図る目的で「エネルギー基本計画」が策定されています。

 わが国では、2002年に「エネルギー政策基本法」が制定され、エネルギーの需給に関する施策の長期的、総合的かつ計画的な推進を図る目的で「エネルギー基本計画」が策定されています。

 エネルギー基本計画は2003年10月に閣議決定され、その後、2007年3月、2010年6月、2014年4月、2018年7月、2021年10月に改定され、これらの計画に基づいてエネルギー政策が見直されています。

 2003年に策定された第1次エネルギー基本計画は、エネルギーに関する諸情勢や政策を取りまとめた年次報告書であるエネルギー白書を国会で審議できるように分かりやすくまとめた内容でした。

 その後、改定されるたびに内容が増補され、第6次エネルギー基本計画は、エネルギーにかかわるありとあらゆる状況、課題と対応などが網羅的に記載されています。

 エネルギー基本計画は3~4年ごとに改定されていますので、次の第7次計画は、ロシアのウクライナへの軍事侵攻や中東情勢の緊迫などエネルギー資源情勢の変化、原子力正常化への課題と対応、再生可能エネルギー大量導入への課題と対応など、前回改定時以降に明らかになった諸問題への対応を踏まえて、2024年あるいは2025年に策定される見通しです。



わが国のエネルギー政策

 わが国では、2度にわたる石油危機をきっかけに、エネルギーの安定供給を確保するため、エネルギー利用の効率化(省エネ)、1973年に1次エネルギー供給量の70%余りを占めていた石油から石炭、天然ガスへのシフト、原子力発電の導入拡大など、エネルギー需給構造の多様化が政策的に推し進められました。

 1980年代後半からエネルギー事業者の経営合理化・効率化を促し、効率的なエネルギー供給システムの実現を目指す目的で、規制・制度改革が行われるとともに、総合的・統合的にエネルギー政策が検討されるようになり、石油事業で1987年から2002年にかけて段階的に規制緩和・自由化が進められ、電力および都市ガス事業では1995年から2005年にかけて、参入規制の緩和、託送制度の整備、小売部分自由化などが行われました。

 これらの効果もあり、2010年までは、エネルギーの供給安定性の維持・向上が図られる中、国内エネルギー価格の低下による内外価格差の縮小、エネルギー事業者の経営体質の改善などが進み、環境目標も着実に達成されていました。

 2012年から、2011年3月に起きた東日本大震災および東京電力福島第1原子力発電所の事故、地球環境問題の顕在化などを考慮して、電力・ガスシステム改革が進められました。

 その主な内容は、原子力政策の見直し、再生可能エネルギーの導入推進、電力・都市ガスの小売全面自由化(電力は2016年4月、都市ガスは2017年4月)、新規事業者の参入促進などで、電力会社の送配電事業部門の法的分離、都市ガス大手3社のガス導管事業部門の法的分離、電力卸取引市場の整備などが行われました。

電力システム改革は抜本的な改正が必要

 経済産業省は、電力・ガスシステム改革の目的を「安定供給の確保」、「料金の最大限抑制」、「需要家の選択肢や事業者の事業機会の拡大」と説明しています。

 小売全面自由化により、電力では全国各地で700余りの新規小売事業者(新電力)が参入し、新電力のシェアは20%を超えましたが、新電力の大半は自前の供給力・調整力を持っていませんので供給安定性の向上にはつながっておらず、事業全体でみるとコストも低減されていません。

 むしろ原子力政策見直し等による原子力利用率の低下と原子力関連コストの大幅な増加、太陽光発電など再エネの導入の拡大による再生可能エネルギーの買取費用(賦課金)の増加、火力発電の利用率の低下による効率悪化、送電・変電・蓄電設備の増強に伴う託送費の増加、システム関連費用等の増加などによって、電気事業全体のコストは増大し、電気料金は上昇しています。

 卸電力取引市場の整備・活用も電気事業全体の効率化・合理化にはつながっておらず、需給調整の役割を担っていた火力発電設備の廃止、電力需給ひっ迫時における価格の高騰による新電力の経営難などを引き起こしています。

 さらに発電量が需要と関係なく自然に変動する太陽光発電の大量導入によって需給調整力が低下してしまったこともあり、電力の供給安定性が低下しています。

 このように、結果から見る限り電力のシステム改革は目標どおりの成果を上げておらず、多くの問題が持ち上がっていますので、次のエネルギー基本計画では、電力システム改革の影響を厳正に評価して制度を改正する必要があるでしょう。


都市ガスと石油は脱炭素化 への対応の検討が必要

 都市ガス事業では、供給安定性や経済性にかかわる問題は生じていませんが、導管事業の分離によってエリア拡大のインセンティブが低下したため、政策課題の一つである供給エリアの拡大(導管延伸)が進みにくくなったと指摘されています。

 また、小売全面自由化によって関東、東海、関西、福岡県などで電力会社などが小規模需要家向けの小売事業に参入し、これらの地域では料金が低下したりサービスが拡充されたりしましたが、他の地域では新規事業者が参入していませんので、結果的に料金およびサービスの地域間格差が拡大しています。

 都市ガス事業では、競争原理をより一層導入するための施策、脱炭素化に向けた課題と対応などを検討することが必要と思われます。

 石油事業も現時点で大きな問題は生じていませんが、低・脱炭素化を進めるための政策として「低炭素化された電気へのシフト」が掲げられていることを考慮すると、在来型の石油需要の減少に伴う事業構造の変化への対応を、国策として、より具体的に検討する必要があると思われます。


計画どおりに進んでいないGHG削減

 温室効果ガスの排出量は、原子力利用率の低下によって2010年度から2012年度まで増加したのち、2013年度から、原子力利用率の緩やかな上昇、省エネの進展、再エネの導入拡大などによって、新型コロナショックの反動でエネルギー需要が高い伸びを示した2021年度を除いて減少していますが、GHG排出量は2030年度の目標に向けたトレンドラインから上振れしています。

 GHGの削減が進んでいない最大の理由は、原子力利用率が低水準にとどまっているからで、これがエネルギー供給コストの増大、エネルギー安定供給の低下にもつながっています。

 原子力利用を正常化できるめどが立たないと、エネルギー政策や環境政策を議論する上で必要なエネルギー需給見通しを正確に策定することが難しくなります。

 原子力正常化を早期に実現するためには、規制体制の再考も含め、制度の運営を見直すことが必要と考えられます。




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4月29日(月)から5月5日(日)まで
価格下降
仕切り価格値下げのため

04月30日付掲載予定

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