石油事業者に必要な危機感
2023.12.20
石油製品の国内の収益環境は2016年以降良好に推移


 石油業界の収益環境は、全面自由化された02年以降、良くなったり悪くなったりを繰り返していましたが、16年以降、概ね良好に推移しています。燃料油の国内需要は減少していますが、マージンが改善傾向で推移しているからです。

 燃料油の卸売・小売マージンが16年以降に改善傾向で推移するようになった主な理由は、元売3・5社(東日本3社、西日本4社)体制への集約、高度化法(2次告示)対応などをきっかけにした石油精製能力の削減、製品輸出の拡大、石化製品への生産シフト、元売各社の系列外販売ルートへの安値供給の減少、元売各社の販売子会社等への採算販売徹底などによると考えられます。

 資源エネルギー庁が公表している卸価格と原油輸入CIF価格の差から算出した精製・卸売マージンの11年~15年の平均はレギュラーガソリンが㍑15・7円、灯油が㍑15・2円、軽油が㍑15・0円だったのに対し、16年~20年の平均はレギュラーガソリンが㍑16・1円、灯油が㍑17・2円、軽油が㍑17・1円、21年~22年の平均(22年1月以降は燃料油激変緩和対策補助金を考慮)はレギュラーガソリンが㍑19・6円、灯油が㍑21・8円、軽油が㍑22・0円へとそれぞれ拡大しています。

 また、資源エネルギー庁による給油所小売価格調査と卸価格との全国平均の差から算出した小売マージンも、11年~15年の5年間の平均はレギュラーガソリンが㍑11・6円、灯油が㍑12・9円、軽油が㍑15・8円だったのに対し、16年~20年の平均はレギュラーガソリンが㍑15・0円、灯油が㍑16・4円、軽油が㍑18・1円、21年~22年の平均はレギュラーガソリンが㍑18・5円、灯油が㍑16・3円、軽油が㍑20・3円へと拡大しています。


好環境はいつまで続くか

 今後の収益環境を予想する上で重要なポイントの一つは、石油製品の国内供給能力と需要とのギャップがどのように推移するかによると考えられますが、国内需要は減少傾向で推移すると予想されますので、需要に合わせて国内向け供給能力を削減し、需給バランスを確保できるかどうかが重要になります。

 22年10月にENEOSの根岸製油所の第1トッパー(原油処理能力日量12万バーレル)が廃止され、23年10月にはENEOSの和歌山製油所(同12万7千5百バーレル)が閉鎖されました。24年3月には出光興産グループの西部石油(同12万バーレル)が石油製品の生産を終了する予定です。しかし、これらの能力削減では需要の減少を補うことができないため、製油所の稼働率は22年度から24年度にかけて2%余り低下する見通しです。

 燃料油の国内需要、供給能力、元売各社の販売政策などからみて、向こう2~3年は市況が大きく崩れることはないと思われます。しかし、現行のエネルギー基本政策に掲げられている石油から電気への需要シフトを促す政策が本格的に推し進められるようになると、石油需要の減少ペースが加速すると予想されます。

 24年度以降に精製能力を削減する計画は示されていませんが、製油所の集約が進まないと過剰供給に陥りやすくなって市況が崩れるリスクが高まると考えられます。


危機感を持って速やかに経営改革に取り組むべき

 24年度以降に精製能力の削減が行われないと仮定すると、26年度の原油処理設備の稼働率は75%程度まで低下すると見込まれます。
 これは、内需の減少によって需給バランスが崩れて石油製品のマージンが悪化した09年度とほぼ同じ水準です。

 元売各社は、石油製品の輸出の拡大および輸入の削減、石化製品への生産シフトなどに取り組むと思われますが、30年ごろまで年平均で日量10数万バーレル、30年以降はそれ以上のペースで、国内供給能力を削減していかなければ、需給バランスが悪化し、製油所の稼働率が低下したり、稼働率を維持するために販売競争が激化したりして、収益環境が悪化しやすくなると考えられます。

 元売間や販売事業者間で販売競争が激化すると、小売事業の収益環境も暗転すると考えられます。収益環境が悪化すると、経営体質の改善を図るために積極的に投資することが難しくなります。石油事業者は、近い将来、石油需要の減少とマージンの縮小とが同時に起きるリスクがあることを踏まえて、できるだけ早く経営改革に臨むべきでしょう。

 なお、元売各社は、複数の製油所で、SAF、水素、アンモニア、合成燃料などの生産設備を設置・増強したり、貯蔵設備の用途を転換したりする計画を明らかにしています。

 計画されている生産規模、経済性などからみて、燃料油の国内需要の過半をカーボンフリーの合成燃料等で置き換えることができるとは思えません。合成燃料等に石油事業の将来を託すのはリスクが大きすぎると思われます。


北海道のガソリン価格予想
4月29日(月)から5月5日(日)まで
価格下降
仕切り価格値下げのため

04月30日付掲載予定

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