正しい日本語というのは時代によって変化するものだが、言葉の使い方で人の印象はガラッと変わり、ちょっとした行き違いで信頼関係が損なわれることもある。

　ＳＳへの飛び込み取材の中で「きょう、所長さんは休みです」や「今、席を外されてます」などは頻繁に耳にし、麻痺してきた感もあるが、「所長さんはいらっしゃいますか」に対し「所長さんはいません。マネージャー（または店長）さんならいます」という揚げ足取り的な返答もあり、こちらの聞き方が悪かったのかと思うのと同時に「それくらい察しろよ」と思い苛々することもある。

　１０年以上前に「よろしかったでしょうか」論争があったと記憶している。飲食店などの接客で注文を確認する際によく聞かれ、違和感を覚える人、何も感じない人の間で起こったもの。本来「よろしかったでしょうか」は過去の物事に対する確認で使われる場合のみ正解で、現在進行形の出来事に使うのは誤り。元は北海道の方言からきているそうで、過去形で言うことで柔らかく表現している、という説もある。今では「○○円からお預かりします」や「○○になります」もバイト敬語として定着している。

　「売っているものがほかと同じなら接客で差別化を図りたい」というＳＳも多いが、ちょっとした言葉遣いが気になる人は意外に多い。若いから、バイトだからは通用しない。誰もが聞きやすい現在の正しい日本語から始めてみるのも一つの方法ではないか。　　　　（彰）