消費者、供給者の代表らが価格高騰対策などで意見交換
本格的な冬の到来を前に北海道経済産業局、北海道は7日、札幌第1合同庁舎(道経産局第1会議室)に消費者、供給者双方の代表らを集め令和5年度灯油意見交換会を開催。今冬の灯油をめぐる諸情勢を共有するとともに、燃料油価格高騰対策、灯油配送の効率化など諸課題を俎上に載せ意見を交わした。消費者側からは、灯油価格の高止まりを「凍死者も出かねない異常事態」だとして抑制策を求める声が相次ぐ一方で、災害時におけるライフラインの維持などに向けてSSや灯油販売店を守る取り組みが不可欠だとの意見も出された。
昨年度と同じオンライン併用型となった本年度の意見交換会には、消費者団体や行政機関、関係機関・団体などからオンライン参加を含め19人が参加。供給者側となる石油業界からはENEOS北海道支店の佐藤由理支店長、出光興産北海道支店の吉野晃崇支店長、北石連の河辺善一会長、エネコープの五十里浩輔社長が参加した。
はじめに主催者を代表して道経産局資源エネルギー環境部の立野雅樹電源開発調整官が、原油価格動向や高止まりする本道の灯油価格にも言を進めてあいさつしたのに続き、資源エネルギー庁資源・燃料部燃料流通政策室の日置純子室長が「石油流通政策」について基調説明。さらに石油連盟流通業務部の半田裕一部長が灯油需給、石油情報センターの佐々木忠則所長が灯油価格について概況を説明した。
最近の原油価格、為替動向などから話を切り出した日置室長は、今年9月7日発動の新たな燃料油価格激変緩和事業について、見直しのポイントや制度イメージなどを解説するとともに、SS過疎地対策にも言及。
需要の減少や施設の老朽化、地下タンク規制とともに、従業員や後継者の確保といった担い手の問題が大きな経営課題であることを指摘し、住民の理解や行政の後押しによる「収入の確保」が重要になる、などとした上で、昨年6月に大幅改訂したSS過疎地対策ハンドブックや和歌山県すさみ町の公設民営SSなど対応2事例を紹介した。
また、省エネ意識の向上や高気密高断熱住宅の普及などに加え、エアコンの普及が灯油需要の減少に拍車をかけていることなどにも触れた半田部長は、10月21日現在の灯油在庫が297万kl、57日分と十分な水準にあることを説明しながら今冬の灯油供給について、寒波などで需要が急増しても石油各社には生産余力があり、輸入による対応も可能なことから「安定供給に支障をきたす恐れはない」ことを強調。
佐々木所長は、原油価格や製品価格の推移などに触れる中で、最近の急激な円安の進行が円建て原油輸入価格を引き上げていることも指摘した。
このあと消費者団体から事前に出されていた質問をもとに、①原油価格や灯油価格の見通し②燃料油価格激変緩和対策③福祉灯油④灯油配送の効率化など⑤災害などへの対応⑥カーボンニュートラル─の6項目を俎上に載せて意見交換。
原油価格の見通しについては佐藤、吉野両支店長が地政学的リスクなど高騰要因が多い、としながらも「当面はプラスマイナスバレル10㌦」の展開になるだろうと見ていることを明らかにし、灯油価格については佐々木所長が、国の補助金で当面はもう少し下がり、ある段階で上下したあと横ばいで推移するとの見方を明らかにした。
また、燃料油価格の高騰については、消費者側が現状を「凍死者も出かねない異常事態」だとして、二重課税解消も含めた価格抑制策を求めたのに対し、日置室長が来年4月まで延長となった燃料油価格激変緩和事業を進めていくと回答。一部に要望のあるトリガー条項の発動については、法改正に時間がかかることや灯油、重油が減税の対象とならないことなどを理由に「補助金の方が柔軟に対応でき(制度として)優れている」との考えを示した。
配送の効率化については河辺会長が「ユーザーの様々なニーズに対応すべく苦労しながらやっている」ことへの理解を求めた上で、IOTセンサーの活用などで効率化を図っているとし、五十里社長も過疎地、遠隔地などの負担軽減に向け、価格差を最大3円に抑えていることを紹介。
このほか消費者側からは災害などへの対応にかかわり、ライフラインの維持や地域格差の解消にはSSや灯油販売店を守る取り組みが必要であるとの意見、また、カーボンニュートラルについても、脱炭素への取り組みを推進する一方で、燃料油需要の減少に伴うSSの統合、撤退などがないよう配慮すべきだとの意見も出された。