『赤字』横ばい 37.1%に
販量増加も粗利率低下
2024.4.5
 2022事業年度に営業利益ベースで「赤字」だとした企業は、急増した前年度とほぼ横ばいの37・1%となるなど、依然として相当数の企業が厳しい経営を強いられていることが全国石油協会の「石油製品販売業経営実態調査」で判明した。調査ではまた、販売数量、売上高がともに伸びる一方で粗利率は低下していることや、廃業、規模縮小を計画している企業が15%近くあることなども明らかになっている。以下、報告書から調査結果を紹介する。

■ 販売・財務

 1企業当たりの年間総販売数量(直売・卸売含む)は、自動車潤滑油8klを含め6406kl。ほぼ横ばいだった自動車潤滑油を除き、レギュラーガソリンなど5油種いずれもコロナ禍で数量を落とした前年度を大きく上回り、総量では1680klの増となった。

 年間総売上高も、販売数量の増加に価格の上昇が重なったことで、潤滑油や油外を含め前年度比44・2%、2億4251万円の増となる8億1673万円。油種別でA重油が140・4%、軽油が37・9%の増となるなど、いずれも前年度を上回った。

 年間総粗利額は1億369万3千円で、前年度比31・7%の大幅な増加となったが、粗利率(総売上に占める割合)は前年度を1・0ポイント下回って12・7%だった。

 一方で1SS当たりの月間店頭販売数量はガソリン94・3kl、軽油35・0kl、灯油18・5kl、A重油4・6klなど合わせて平均152・7kl。月間店頭売上高はガソリン1389万9千円、軽油451万6千円、灯油186万3千円、A重油42万5千円、油外157万4千円など、合わせて前年度比18・6%増の2244万円となっている。

 平均粗利単価(マージン)は、レギュラーがフル19円20銭、セルフ14円90銭、軽油がフル21円70銭、セルフ17円10銭、灯油がフル20円50銭、セルフ16円20銭などとなっており、すべての油種でフルがセルフを上回った。

 なお、油外の月間粗利額は平均89万円で、それに占める割合はTBASP44・5%、洗車35・0%、点検整備20・5%。

 他方、営業利益ベースで「赤字」だったとした企業は、前年度を0・1ポイント下回って37・1%、また、経常利益ベースでも1・4ポイント下回って21・1%となっており、専業が兼業より赤字企業の割合が高い。

 営業利益ベースで赤字とした企業のうち60・3%は赤字額が500万円に満たないが、16・1%は500万円以上1000万円未満、7・8%は1000万円以上1500万円未満、15・8%は1500万円以上。

 一方で「黒字」だとした企業も、その25・6%は黒字額が500万円未満で、赤字企業と合わせると62・7%となり、依然として相当数の企業が厳しい経営を強いられていることが分かる。

 運営するSS数別にみると、1カ所運営企業の41・5%、2~3カ所運営企業の33・5%、4~5カ所運営企業の26・4%、6~9カ所運営企業の12・1%、10カ所以上運営企業の9・1%が赤字だとしており、特に1カ所運営企業の赤字割合が増加している。


■ 労務状況

 1SS当たりの従業員数は、前年度を0・5人上回って6・3人。役員や店主が0・7人、正社員が3・0人、派遣社員や契約社員、パート・アルバイト(8時間労働換算、2時間労働×4人=1人)が2・6人で、パート・アルバイトなどが前年度より0・5人増えている。

 また、ガソリンの月間店頭販売量別の1SS当たり従業員数は、200kl以上が7・8人となって最も多く、それに100kl以上125kl未満と125kl以上150kl未満の6・6人、50kl以上75kl未満と75kl以上100kl未満の5・7人などが続く。このほか25kl未満が前年度を0・1人上回って3・7人、25kl以上50kl未満が0・3人下回って4・6人となっており、販売量の多い企業が従業員数も多い傾向は従前と同じ。業態別ではセルフが7・3人、フルが6・0人だった。

 一方、平均年収は所長クラス(平均年齢52・6歳)が458万円、一般社員(同46・3歳)が342万5千円で、小幅ながらともに前年度より上昇。運営SS数が多い企業の方が高い傾向はこれまでと変わらない。

 人手不足が懸案となっている中で、SS運営に必要な人員の確保については、回答した1557社の50・2%となる782社が全SSで確保できているとし、24・9%の388社が一部SSで不足、22・3%の347社が全SSで不足していると回答。

 ただ、2~3年後のSS運営に必要な人員確保の見通しについて、全SSで確保できると思うとしたのは20・9%の325社にとどまり、先行きへの不安もあらわに。不足している具体的な人員層(複数回答)は、マネージャー以外の正社員としたのが72・7%で最も多かった。

 また、人手不足の解消に向けこれまでに行った取り組みは休業日の設定が32・8%で最多。それに勤務時間の短縮や雇用延長が20%台で続き、いずれも10%未満ながらSSの集約、セルフ化、兼業部門からの配置転換といったものもあった。


■ 異業種進出等

 異業種への進出・転換を計画しているとした企業は、回答した1627社の12・7%となる206社。計画している最も有力な異業種事業(単一回答)はコインランドリーが34社で最も多く、それに中古車を含む自動車販売の28社、駐車場を含む不動産賃貸・管理の25社、レンタカーの16社、飲食業の14社、自動車整備の12社、介護やデイサービス事業などを含む福祉の10社が2桁で続く。

 さらにいずれも1桁ながら、車体板金塗装、高齢者向け宅配を含む移動販売、コイン洗車場、土木・建設業、遊戯・娯楽施設、農林水産業、製造業、車検、食品・雑貨販売、運輸・観光、太陽光発電、LPG販売、廃棄物処理業といったものもあった。

 これら業種を選択した理由については、39・3%となる81社が「ガソリンスタンド事業との関係性が高い」ことを挙げるほか、24社が「ガソリンスタンド事業よりも収益が見込める」こと、23社が「立地条件が良い」ことを挙げている。

■ 経営上の課題

 今後のSS経営の方針について、回答した1655社の71・4%、1182社は「継続する」とし、規模の拡大もわずかながらあったが、その一方で「廃業」を考えている企業が8・3%、138社、規模を縮小する企業が6・5%、108社あり、未定だとする企業も12・1%、200社に及んだ。

 廃業を考える理由(複数回答)については、前年度と同様、後継者の不在が50・0%、69社で最も多く、施設の老朽化が40・6%、56社でそれに続く状況。

 加えて燃料油販売量の減少や粗利益減少、地下タンク規制強化への対応不能といったものも依然として多く、さらには従業員の確保が困難、運転資金が不足、仕入れ先の取引条件改善が困難、油外収益が減少といったものもあった。

 廃業の時期は63・8%の88社が「具体的には未定」としたが、7社は1年以内とし、また、23社は3年以内、15社は5年以内としている。


■ その他

 SSの災害対策として導入している設備(複数回答)で最も多かったのは、回答した1534社の76・9%、1180社の自家発電機。以下、井戸設備、緊急用可搬式ポンプ、情報通信機器、貯水設備が続く。

 今後の導入を検討している設備については「ない」が57・2%を占めたが、最も多かったのは情報通信機器、次いで緊急用可搬式ポンプだった。



北海道のガソリン価格予想
5月6日(月)から5月12日(日)まで
価格上昇
実質ベースで仕切り価格が上昇

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