SS車検 陰に「厳しい評価」
「順法」の希薄さ指摘も
2016.8.30

検査を待つ車両で埋め尽くされる札幌運輸支局
 車検事業への参入が加速するSS業界では、ディーラーや専業工場との差別化を図って受注拡大に取り組んでいるが、様々な課題も浮かび上がってきた。車検を所管する北海道運輸局をはじめ関係機関からは書類の不備や整備の不良、車検受付と整備現場との意思疎通不足によるトラブルなどを指摘する声が聞こえてくる。その一方で、ディーラーなどはこのところ進境著しいSS車検に対して警戒感を強めており、顧客争奪戦は激化している。このような情勢を再認識した上で課題を克服し、競合他業種に対する優位性を最大限に生かした戦略の再構築を図るべきとも言えそうだ。   


 道路運送車両法などに定められた自動車整備工場(車検の看板を掲げられる工場)は、分解整備7項目すべてを作業できる「認証工場」と、一部の項目のみ作業する「専門認証工場」に分けられる。認証工場のうち一定の基準をクリアし、検査ラインを保有しているのが「指定工場」だ。

 道内の工場総数は7月末現在、4205カ所(指定工場1824カ所、認証工場2381カ所)。SS系列の工場数は、指定工場約50カ所に加え「SS系列の認証工場は指定工場と同じく同率以上の割合で存在すると推定される」(北海道運輸局担当官)ことから、120~130カ所に達する。

 このように1995年の規制緩和によってSS車検は一大事業部門に成長してきたが、一方で問題点も浮き彫りになってきた。最も多いのが車検にかかる公的書類の内容不備。「SS系列に限定すれば分解整備状況を記す定期点検記録簿の記載漏れが目立つ」と指摘するのは札幌運輸支局の担当官。修正はその場で済むので車検手続きが遅延する心配はないが、その背景に潜むSS現場の体質を危惧する。車検部門が完全分離され整備作業に集中できれば問題はないが、給油や洗車、タイヤ交換などのSS業務によって作業が途切れ途切れになればミスを呼び込みやすいからだ。「経営上の問題から人員増が無理なら、今一度、整備の流れを確立すべき」だと改善策を提起する。


優位性は健在 伸びしろ無限
 さらにここ数年、軽自動車の車検不適合が増えているのもSS車検だという。「特に車両下部の不具合が多い。サビによる劣化から穴が開くと、不適合の確率が高くなるのでしっかりと確認してほしい」と忠告するのは軽自動車検査協会札幌主管事務所の元検査官。融雪剤の大量散布という北海道特有の事情はあるものの、洗車、特に下部洗浄の励行を示唆した発言とも受け取れる。

 SS車検における受付窓口と整備現場とのコミュニケーション不足を指摘する声もある。「すべてのSS系列とは言わないが、ディーラーや専業の指定工場とのレベルの差を感じる時もある。何かトラブルが発生した時に、窓口と現場との責任転嫁が露呈したり、車検業に対するコンプライアンス意識の低さを垣間見る」と札幌地方自動車整備振興会の担当者は懸念を隠さない。兼業意識を捨て、ユーザーの命を預かる責任の重さを再認識してほしいとの思いが言外ににじむ。 

 関係業界から厳しい注文を突き付けられる一方で、SSはディーラーや専業工場がうらやむほどの優位性を持つ。それは黙っていても車検営業のターゲットとなる顧客が毎日のようにドライブウェイに飛び込んでくること。信頼関係を築いて顧客ニーズをしっかりキャッチし、専業より低価格の車検見積りを提示できること。お得なセットプランや特典サービスなどSSならではの付加価値を訴求できることなど車検戦略に事欠かない。道央圏のあるディーラー幹部が「SSが本気を出したら脅威だ」と警戒するのもうなずける。 

 低価格低マージンで長らく疲弊しているSS業界にとって、車検市場は間違いなく油外収益拡大の最有力分野。手厳しい忠告をエネルギーに変えれば、SS車検の存在感はさらに高まりそうだ。



北海道のガソリン価格予想
5月6日(月)から5月12日(日)まで
価格上昇
実質ベースで仕切り価格が上昇

05月10日付ヘッドライン

■ガソリンは年平均2・6%減 24~28年度石油製品需要見通し
■期待外れも「そこそこ」 GW商戦
■北広島でシェアサイクル 道エネが6カ所に自転車100台配置
■2年連続の前年割れ 5年度の国内燃料油販売
■油外全般好調に推移 悩みは人手不足 ナラサキ石油白石SS